3.物権的請求権

1 物権の効力(物権的請求権)

条文に規定はないが、所有権の絶対的・排他的な支配を実現するために、物権には物権的請求権が認められている。
これは、物権の円満な状態を妨害され、または妨害されるおそれがある場合に、権利者が一定の行為を請求する権利であり、3種類ある。
所有権の効力は、この物権的請求権によって担保されている。
「物権的」とあるが、すべての物権に3種類認められているわけではない。問題となるのは主に所有権である


物権的請求権の根拠
形式的(条文)根拠は以下のとおりである(例示)
@占有権についての占有訴権の規定(197条〜201条)
A「回復」者・請求権という文言(191条等)
B「本権の訴え」という文言(189条等)

実質的根拠については学説は分かれるが、所有権が、物の絶対的・直接的・排他的に支配する権利であることがあげられている


物権的請求権の法的性質(判例・通説)
@物権とは独立して消滅時効にかからない(T5.6.23)
A物権的請求権のみを譲渡することはできない(T6.3.23)
B相手に故意・過失がなくても主張可(S45.10.21)
C請求に対抗要件を必要としない(通説)

なお、上記Bの性質や、以下に見るように、相手方が侵害状態の原因者に限られないことから、 不法行為責任の「行為責任」に対し、 物権的請求権は「状態責任」であるといわれる。


2 物権的請求権の種類

物権的返還請求権
占有を喪失することで所有権の実現を侵害されている場合に、所有権者が侵害者に対して、目的物の返還を請求できる権利。

物権的妨害排除請求権
占有は喪失していないがそれ以外の方法で物権を侵害されている場合に、所有権者が侵害者に対して、 その妨害の除去を請求できる権利

物権的妨害予防請求権
物権の侵害が生じるおそれが高い場合に、所有権者が侵害を行う危険のある者に対して、その妨害の予防を請求する権利



――――図解・判例・条文等――――
3 物権的請求権の行使

物権的請求権の要件は@請求権者に所有権があること、A侵害(または侵害の危険)があることである。
請求権者は、原則として、登記や引渡しの対抗要件を具備する必要はないと解されている。
これらの侵害の程度の基準は、客観的違法状態、つまり、もっぱら客観的な性質・内容から判断するとしている(学説)



物権的請求権の相手方
請求権の相手方は、返還請求についていえば、目的物を占有することで現に所有権を侵害している者である。
直接占有者(受寄者、賃借人等)のみならず、間接占有者(寄託者、賃貸人等)も請求の相手方となる(判例)。ただし、 占有補助者(法人の機関、家族等)は、請求権の相手方とはなりえない。


ある土地の所有者は、現に土地上に建物を占有している不適法占有者と、建物の名義人のどちらに対して、明渡しを請求できるか。

【判例の見解】
原則現に敷地を占有し、土地の所有権を侵害しているB
例外自らの意思に基づいて建物所有権の登記を経由した場合には、建物を譲渡したとしても、Cも相手方となりうる
(理由)建物の名義人が建物所有権の喪失を主張するには、登記を経由すべきである(H6.2.8)


【参考/従来の判例】現実に建物を所有する者(左図B)のみが請求権の相手方となりうるとしていた。その理由は、 土地の所有者(A)は、建物の所有権移転について、登記の欠缺を主張するのに正当な利益を有する第三者ではないとしていた。
この見解は以下のように批判された
(批判)土地所有者(A)は、登記簿に記載されていない実質的な所有者を探し出す困難を強いられる



物権的請求権の費用は誰が負担するか
物権的請求権の行使に必要な費用の負担者が、請求した側なのか、請求された相手方なのかという問題は、 物権的請求権の内容についての問題である。

判例
物権的請求権の内容は、行為を請求することであり、費用は、相手方の負担になるとする(行為請求権説) (批判)同じ案件で、妨害排除請求権と返還請求権をそれぞれが主張しうる場合に、どちらが請求するかによって 費用の負担者が変わるのは妥当ではない。

行為請求権説の修正(我妻説)
原則として判例のとおり、費用は相手方負担であるが、例外的に 所有物返還請求につき、相手方が積極的に関与して目的物を侵奪したのでない場合は、費用は請求者負担であるとする。

忍容請求権説
物権的請求権の内容は、権利者が物の支配状態を回復することにあり、 相手はこれを消極的に忍容するにすぎない。よって、費用は請求権者の負担となる











*物権的請求権の相手方*
【事例】Aの土地上に、無権原に建物を建造しこれを所有するCが、建物をBに譲渡し、 Bはこの建物に不適法占有者として居住していた。
Aが所有権に基づいて物権的請求権を行使する際、相手方は、実際に占有しているBか、それとも建物の名義人であるCか。


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