1.所有権の内容

1 所有権の性質

特定の有体物を全面的に支配する権利を所有権という。その性質は、以下のとおりである。

全面支配性物を直接支配し、一切の利益を享受できる。包括性ともよばれる。
地上権のような用益物権、抵当権のような担保物権はこの点で異なり、制限物権とよばれる。
恒久性所有権については、存続期間は予定されておらず、消滅時効にかかることもない
他人に時効取得されると反射的に所有権を失うが、それは、権利の不行使が長く続いたという理由からくるのではない
弾力性制限物権による制限が消滅すれば、自動的に全面的支配権が復活する
観念性所有者の現実的支配の有無にかかわらず、所有権は存続する


所有権の客体
所有権の客体は、排他的支配が可能であり、単一性・独立性を有する、特定された有体物である。
有体物;空間の一部を占める物質をさす。
         生命・身体は所有権の客体とはならない
一物一権主義 所有権の客体は、独立した単一の物でなければならないという考え方。物権の排他性、という意味で使うこともある。
建物の区分所有は区分所有法で、複数の動産に対する集合動産譲渡担保の成立は判例上で認められるなど、 例外も数多くある。
特定性の原則物は、特定されることによって、全面的な支配が可能になる。
――――図解・判例・条文等――――


2 所有権の限界

所有権は、ある物に対する全面的・排他的支配を可能にする権利ではあり、近代法は所有権絶対の原則 を掲げているが、これに対しても制限がある。

206条所有者は、法令の制限内において、自由にその所有物の使用、収益及び処分をする権利を有する。
207条土地の所有権は、法令の制限内において、その土地の上下に及ぶ。
法令とは、具体的には以下のような法令である。
都市計画法、土地区画整理法、建築基準法、道路法、下水道法、覚せい剤取締法、 農地法、森林法、文化保護法、消防法など


ただし、法令の制限も合理的なものである必要がある。これについては、 「森林法違反事件」という判例がある。 クリックで、裁判所のページが別窓で表示されます。
これは、森林法の規定が憲法29条2項に反しないか争われたが、結果として、違憲判決が出された。よって、1987年に改正されている。


2 相隣関係

2-1 相隣関係とは

土地や建物の所有者相互の利益を調整するために設けられた規定を相隣関係(209条〜)という。


2-2 公道に至るための通行権

他の所有者の土地に囲まれ、公道に出ることができないとき、その他の所有者の土地を、通行のために使用することができる権利がある。
   民法改正前は、囲繞地通行権といった。

*原則*
通行可能な場所・方法
通行権を有する者のために必要であり、かつ、他の土地のために損害が最も少ないものを選ばなければならない(211条1項)。
また必要であれば、通路を開設することができる(同2項)。
償金・補償金について
その通行する他の土地の損害に対して償金を支払わなければならない。ただし、通路の開設のために生じた損害に対するものを除き、 一年ごとにその償金を支払うことができる。

*例外*
分割や土地の一部譲渡によって公道に通じない土地が生じたとき場合は、以下のようになる。
通行可能な場所・方法
他の分割者の所有地のみを通行することができる(213条1項)。
償金・補償金について
償金を支払うことを要しない。

では、分筆された土地について、それぞれ第三者に譲渡された後も、公道に面していない土地の所有者が有する通行権を、 分割された他の土地(残余地)の所有者は負い続けなければならないのか。

判例
残余地に特定承継が生じた場合も、213条の通行権は消滅せず、公道に面していない土地の所有者は、 残余地を通行する権利を有する。
(理由@)213条の通行権は、残余地自体に課せられた物権的権利である。
(理由A)分筆に関係ない他の土地の所有者が、自己の関与のないところで、通行権を認めなければならないとなるのは妥当ではない。

学説
残余地に特定承継が生じた場合にも、213条の通行権は消滅しないが、無償ではなく、有償になるとする。
(理由)通行権の存在は登記により公示されるわけではない(判例)ので、残余地の特定承継人は、現地検分しても 通行権の存在を認識できない。










210条(公道に至るための他の土地の通行権)
他の土地に囲まれて公道に通じない土地の所有者は、 公道に至るため、その土地を囲んでいる他の土地を通行することができる。
池沼、河川、水路若しくは海を通らなければ公道に至ることができないとき、 又は崖があって土地と公道とに著しい高低差があるときも、前項と同様とする。

原則
例外:所有者Aと所有者Cの土地の区別が、 所有者Cによってなされたものであった場合等

213条
分割によって公道に通じない土地が生じたときは、その土地の所有者は、 公道に至るため、他の分割者の所有地のみを通行することができる。この場合においては、償金を支払うことを要しない。
前項の規定は、土地の所有者がその土地の一部を譲り渡した場合について準用する。


2-3 234条と建築基準法65条

民法234条は、建物と建物の間を境界線から50cm以上離すように定めている。
他方、建築基準法65条は、外壁が耐火構造ならば、境界線に接して建ててもよいとしている。

両規定の関係について、以下のような見解がある。

判例
建築基準法65条は、民法234条1項の特則である(特則説)
つまり、差止めや損害賠償の問題は生じないということである。

有力説
建築基準法65条は、公法の規定であり、民法234条の特則ではない(非特則説)。
(批判)建築基準法65条の意味を見出せない


234条(境界線付近の建築の制限)
建物を築造するには、境界線から五十センチメートル以上の距離を保たなければならない。
前項の規定に違反して建築をしようとする者があるときは、 隣地の所有者は、その建築を中止させ、又は変更させることができる。ただし、建築に着手した時から一年を経過し、 又はその建物が完成した後は、損害賠償の請求のみをすることができる。

【参考】建築基準法65条(隣地境界線に接する外壁)
防火地域または準防火地域にある建築物で、外壁が耐火構造のものについては、 その外壁を隣地境界線に接して設けることができる。


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