4.消滅時効

1 消滅時効制度

1-1 消滅時効の客体

法定期間の経過によって権利が消滅する制度を消滅時効という。
なお、法律関係の早期安定のため、短期で権利が消滅する場合がある(短期消滅時効)。169条以下に定められている。

消滅時効の客体
消滅時効にかかる権利は、債権(10年)と、所有権以外の財産権(地上権など。20年)である。

消滅時効にかからない権利
消滅時効にかからない権利は、@所有権、A占有権、B留置権、C先取特権である。 また、質権は被担保債権とは別に消滅時効にかからない。なお、抵当権には397条の特則がある。
397条について;抵当権が独立して消滅時効にかかるのは、債務者または抵当権設定者以外の者との関係においてである

所有権が消滅時効にかからないことから、物権的請求権、共有物分割請求権、移転登記請求権等も消滅時効にかからない。


167条(債権等の消滅時効)
債権は、十年間行使しないときは、消滅する。
債権又は所有権以外の財産権は、二十年間行使しないときは、消滅する。



1-2 消滅時効の起算点

消滅時効の要件はその権利を行使しない、ということであるが、その起算点については問題となる。 条文は「権利を行使できる時から進行する」としている。

この論点は、後にみる「履行遅滞となる時期」と混同しやすい。以下に履行遅滞の起算点を比較として挙げる

消滅時効の起算点
履行遅滞の起算点
確定期限の債権期限到来時期限到来時
不確定期限の債権期限到来時 期限が到来し、かつ債務者がこれを知ったとき
期限の定めのない債権債権成立のとき履行の請求を受けたとき
不法行為に基づく
損害賠償請求
被害者またはその法定代理人が損害および加害者を知ったとき 不法行為の時
債務不履行による
損害賠償請求
本来の履行を請求できる時(判例)
契約解除による
現状回復請求権
契約解除時催告時
消費貸借に基づく
返還請求権
@催告あり―催告後、相当期間経過後
A催告なし―契約成立後、相当期間経過後
催告後、相当期間経過後

期限の利益喪失約款(債務の支払を1回でも怠った場合は残額を支払わなければならない)付の割賦払い債権での消滅時効の 起算点が問題となるが、判例は、債権者が残額を請求したときは、残額の消滅時効が進行し、残額の請求をしなかった場合は、 それぞれの支払期日から時効が進行するとする。
学説は、不履行とともに残額の時効が進行するとする。これは、条文の「権利を行使できるとき」という文言に合致し、 また、その点で期限の定めのない債権と同視しうるからであるとする。


166条(消滅時効の進行等)
消滅時効は、権利を行使することができる時から進行する。
前項の規定は、始期付権利又は停止条件付権利の目的物を占有する第三者のために、 その占有の開始の時から取得時効が進行することを妨げない。ただし、権利者は、その時効を中断するため、 いつでも占有者の承認を求めることができる。



2 消滅時効と関連・類似の制度

消滅時効制度と類似の概念として、以下のような制度や理論がある。

2-1除斥期間

一定期間内に権利を行使しないことで、権利が当然に消滅するという期間を除斥期間という。その制度は消滅時効と似ているが以下の点で違う。
   権利がとくに速やかに行使されることを目的として、権利行使の期間に制限を加えた制度である

除斥期間と消滅時効の違い
@中断がない
A援用を要しない
B起算点は権利の発生時である
C遡及効がない
時効についての停止制度は、これを認めないと酷になるので、認めるべきだとされている(不法行為の被害者が法定代理人を 付与した案件についてH10.6.12)

除斥期間か消滅時効か
消滅時効か除斥期間かという判断は、権利の性質や規定の趣旨、法律関係の実質を考慮して判断すべきであるという主張が有力である。
民法上は、724条(不法行為の損害賠償請求についての)後段にある20年や、566条3項(担保責任についての)1年が除斥期間であると されている。
具体的には、@取消権等の形成権や、A請求権でも、比較的短期の期間制限であり、かつ「時効によって」の 文言がない場合、またB長期と短期の期間制限が定められている場合の長期の期間は、除斥期間であると解される。






2-2 失効の原則

権利者が、権利を永い間行使しないで相手方がもはやその権利は行使されないと信頼していたところ、 権利者が突然態度を変更して権利を行使することは信義則に反するので考え方を失効の原則という。

一定の要件のもと認められる消滅時効とは違い、この原則が適用されると権利が行使できなくなるので、 通説・判例とも、適用は慎重にすべきだとしている。


2-3 抗弁権の永久性

権利を現状の維持のために防御の形で主張する場合の抗弁権は、消滅時効にかからないという考えを 抗弁権の永久性という。
しかし、この概念は、判例・学説とも一般的になっているとはいえない


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