3.取得時効

1 所有権の取得時効

法定期間の経過によって権利が取得される制度を取得時効という。
所有権については162条が、所有権以外の権利については163条が、時効取得が成立する要件を示している。
【参照】取得時効と登記については、「物権/物権変動/不動産の物権変動」


1-1 所有権の取得時効の要件

所有権の取得時効の要件は、以下のとおりである
――――図解・判例・条文等――――
@所有の意思をもって占有すること(自主占有)
自主占有所有の意思(所有権を自己に帰属させようとする意思)のある占有
  5歳に達した者は特段の事情がない限り自主占有できる(S41.10.7)
他主占有自主占有ではない占有。賃借人、使用借人、受寄者のような者の占有であり、 これらの者は、どれだけ長く占有しても時効取得をすることはできない。

被相続人が他主占有であっても、相続人の占有が自主占有となりうる(S46.11.30)
占有者は、所有の意思をもって占有すると推定される(186条1項)ので、 取得時効の成立を争う側が推定をくつがえす必要がある。


A「平穏」かつ「公然」
「平穏」は強暴の反対であり、強迫や暴行による占有ではないことである。「公然」は隠避の反対であり、占有を秘匿しないことである。

占有者の占有が、平穏かつ公然であることは推定される(186条1項)ので、取得時効の成立を争う側が推定をくつがえす必要がある。


B「他人の物」を占有
占有の客体は、「他人の物」とあるが、自己の物でも時効取得できるとされる(S9.5.28)。
物には動産、不動産が含まれる。

なお、公有道路などの公物については、公共用財産としての形態、機能を全く喪失した場合で、黙示的に公用が廃止されたと認められる場合は、 取得時効の対象となりうるとしている(S51.1224)


C20年間または善意・無過失であれば10年間占有を継続する
ここにいう善意とは、ただ他人の物と知らなかったというだけではなく、自己に所有権があることを信じることと解されている。

この善意・無過失は、占有の始めにあればよい(M44.4.7・通説)。
自分の前主が善意・無過失で占有を始めた場合、自分が悪意であっても、10年間の取得時効を主張することができる(S53.3.6)
占有者が占有の目的不動産に抵当権が設定されていることを知り、 または不注意によって知らなかった場合でも、善意・無過失の占有といえる(S43.12.24)

善意は186条1項によって推定されるが、無過失は推定されない(S46.11.11)ので、取得時効を主張する者が主張・立証する必要がある。
162条(所有権の取得時効)
二十年間、所有の意思をもって、平穏に、かつ、 公然と他人の物を占有した者は、その所有権を取得する。
十年間、所有の意思をもって、平穏に、かつ、公然と他人の物を占有した者は、 その占有の開始の時に、善意であり、かつ、過失がなかったときは、その所有権を取得する。


186条(占有の態様等に関する推定)
占有者は、所有の意思をもって、善意で、平穏に、かつ、公然と占有をするものと推定する。
前後の両時点において占有をした証拠があるときは、占有は、その間継続したものと推定する。

















――――判例【昭和53年3月6日】――――
【事例】 「162条2項は、時効期間を通じて占有主体に変更がなく同一人により継続された占有が主張される場合について適用されるだけではなく、 占有主体に変更があって承継された2個以上の占有をあわせ主張される場合についてもまた適用されるものであり、後の場合にはその主張される最初の占有者につき その占有開始の時点においてこれを判定すれば足りる」


1-2 所有権の時効取得の効果

所有権を原始取得することである。抵当権付の土地を時効取得した場合、 抵当権は消滅し、時効取得者は、抵当権者に抵当権設定登記の抹消を請求することができる。


2 所有権以外の権利の取得時効

占有を伴う財産権については、所有権と同様、取得時効の対象となる。その要件も所有権についての162条とほぼ同じであるが、 具体的には以下のようになる。

用益物権
地上権土地の継続的な使用という外形的事実と、その使用が地上権行使の意思に基づくものであることが客観的に 表現されていることを要する(判例)
永小作権地上権と同様である
地役権継続的に行使され、かつ、外形上認識することができるものに限り、時効によって取得することができる(283条)

担保物権
占有を伴う質権については、取得時効成立の余地があるが、占有を伴わない抵当権や、法定担保物権である留置権や先取特権は認められない。

不動産賃借権
【判例】地上権と同じく、土地の継続的用益という外形的事実が存在し、それが賃借の意思に基づくものであることが客観的に 表現されている場合は、時効取得の対象となりうる(S43.10.8)
  賃料の支払は、賃借権に基づく行使の意志の客観的表現として重要な資料となる

 @他人所有の土地の不法占拠者が、地主に賃料を払い続けた場合
 A賃貸借契約に瑕疵があったが、有効と信じて賃料を払い続けた場合(S45.12.15)
 B他人の所有物の賃貸借であった場合


その他
転借権や知的財産権(著作権・特許権など)も時効取得の対象となるが、取消権や解除権などの形成権は時効取得の対象とはならない。


163条(所有権以外の財産権の取得時効)
所有権以外の財産権を、自己のためにする意思をもって、平穏に、かつ、公然と行使する者は、 前条の区別に従い二十年又は十年を経過した後、その権利を取得する。



3 取得時効の中断の特則

これを自然中断という。中断事由は、164条のとおり、任意の中止もしくは他人に占有を奪われることであるが、 他人に占有を奪われても、1年以内に占有回収の訴えを提起すれば、占有は継続する(物権/占有権を参照)ので、中断しない。
  他人に占有をさせることは取得時効の中断事由とはならない。



164条(占有の中止等による取得時効の中断)
第百六十二条の規定による時効は、占有者が任意にその占有を中止し、 又は他人によってその占有を奪われたときは、中断する。


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