2.時効の中断と停止

1 時効の中断

時効の進行中に一定の事由が生じたとき、それまでの時効期間を立ち切って、 振り出しに戻すことを時効の中断という。 以下では、147条から157条の法定中断について述べる。
【補則】取得時効の要件である占有を失うことで、当然に時効の進行が断たれる場合を自然中断という


1-1 時効の中断事由

時効が中断する原因となる事由は「請求」「差押え、仮差押えまたは仮処分」「承認」である(147条)。

請求(147条1号)
これには、裁判上の請求、支払督促、和解及び調停の申立て、破産手続参加、催告が属する。

@裁判上の請求(149条)
債権者が原告となって債務者に訴えを提起することである。以下は判例の見解。
訴えの却下または取下げ中断効は生じないが、裁判上の催告としての効果はある
一部請求残部に中断効は及ばないが、一部と明示しなかった場合は全部の中断を生じる
応訴中断の効力を生じる
留置権の抗弁中断効は生じないが、裁判上の催告としての効果はある
債権者代位行使の訴え被担保債権の消滅時効は中断されない
債権者取消権の行使代位債権の消滅時効を中断するが、被担保債権については中断されない

訴えの種類について
訴えの種類は問わない(給付・確認・形成の訴え)。訴えの提起の時に中断効が生じる。
@債務者が提起した債務不存在確認訴訟の被告として、債権者が債権の存在を主張した場合(S14.322)
A抵当権設定登記の抹消請求訴訟において、被告が被担保債権の存在を主張した場合
B占有者から提起された移転登記手続請求訴訟の被告たる所有者が、自己に所有権のあることを主張た場合

A支払督促(150条)
民事訴訟法382条以下参照。中断効は、申立てのときに生じる

B和解及び調停の申立て・任意出頭(151条)

C破産手続参加(152条>)

D催告(153条)
正式な手続をふまずに、相手方に一定の行為を請求することを催告というが、 催告をしただけでは、時効は中断しない。催告後、6ヶ月以内に153条が要求する一定の手続を踏むことで、時効は中断する。
催告を繰り返すことで、6ヶ月の期間を引き延ばすことはできない(判例)


差押え、仮差押および仮処分(147条2号)
これらは、裁判所をとおして権利者として実現する行為であり、時効中断の事由となりうる。


承認(147条3号)
時効の利益を受ける者の側から、権利者に対し、権利の存在をすすんで認めるような行為をすることを承認 という。
承認は法律行為ではなく、観念の通知(準法律行為)であり、中断事由を知らないでしたとしても、権利の確認の効果が生じる。 (準法律行為は、効果意思に基づくものではないから/T8.4.1)

処分能力や権限は不要である(156条)が、管理能力・権限は必要であるので、未成年者は保護者の同意がなければ承認は取消しうるものとなる。
成年被後見人には、後見人の同意を得ても、単独で有効な承認をすることができない。 被保佐人は、保佐人の同意がなくても自ら承認をすることができる(T7.10.9)

債務者が利息を払う意思表示は、元本債権の承認とされる(S3.3.24)。一部の弁済も、債権全部の承認となる(T8.12.26) 二番抵当権を設定することは、他の債権者が設定してあった一番抵当権の承認とはならない(T6.10.29)


――――図解・判例・条文等――――








147条(時効の中断事由)
時効は、次に掲げる事由によって中断する。
@請求
A差押え、仮差押え又は仮処分
B承認

149条(裁判上の請求)
裁判上の請求は、訴えの却下又は取下げの場合には、時効の中断の効力を生じない。

























153条(催告)
催告は、六箇月以内に、裁判上の請求、支払督促の申立て、和解の申立て、 民事調停法若しくは家事審判法による調停の申立て、破産手続参加、再生手続参加、更生手続参加、差押え、 仮差押え又は仮処分をしなければ、時効の中断の効力を生じない。





156条(承認)
時効の中断の効力を生ずべき承認をするには、 相手方の権利についての処分につき行為能力又は権限があることを要しない。
1-2 時効中断の効果

時効の中断によって、それまで進行してきた時効期間は効力を失う。 そして、中断事由が終了したときから新たな時効が進行する(157条)。


この中断の効力が及ぶ範囲については、以下のような例がある。
@連帯債務において、一人の債務者にした請求の効果は他の債務者にも及ぶ(434条)ため、中断の効果も及ぶ。
A主債務の中断の効力は、保証債務にも及ぶ
B主債務の中断の効力は、物上保証人にも及ぶ
 【参照】「債権/多数当事者と保証」


157条(中断後の時効の進行)
中断した時効は、その中断の事由が終了した時から、新たにその進行を始める。
裁判上の請求によって中断した時効は、裁判が確定した時から、新たにその進行を始める。

148条(時効の中断の効力が及ぶ者の範囲)
前条の規定による時効の中断は、その中断の事由が生じた当事者及びその承継人の間に おいてのみ、その効力を有する。




2 時効の停止

時効の停止とは、時効の完成まぎわに、時効の中断を困難にさせる以下のような 停止事由が生じたときに、時効完成によって不利益を被る者のために、一定の期間、時効の完成を猶予することである。
この停止期間は、時効期間に算入されない。
時効の中断の場合、それまでの時効期間が無意味になってしまうが、停止は経過した期間を生かす点で大きく異なる


時効の停止事由(158条〜161条)
停止事由・対象
停止期間
時効の期間の満了前六箇月以内の間に未成年者又は成年被後見人に法定代理人がないとき 未成年者若しくは成年被後見人が行為能力者となった時又は法定代理人が就職した時から六箇月を経過するまでの間
未成年者又は成年被後見人がその財産を管理する父、母又は後見人に対して権利を有するとき その未成年者若しくは成年被後見人が行為能力者となった時又は後任の法定代理人が就職した時から六箇月を経過するまでの間
夫婦の一方が他の一方に対して有する権利について 婚姻の解消の時から六箇月を経過するまでの間
相続財産に関して 相続人が確定した時、管理人が選任された時又は破産手続開始の決定があった時から六箇月を経過するまでの間
時効の期間の満了の時に当たり、天災その他避けることのできない事変のため時効を中断することができないとき その障害が消滅した時から二週間を経過するまでの間


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