3.法人の能力および不法行為

1 法人の能力に対する制限

法人は、権利義務の主体であるが、その能力については、性質上自然人と同じというわけではない。 43条にあるように、一定の範囲で制限を受けることもやむを得ない。

1-1 性質上の制限

法人は権利能力をもつが、法人の性質上、制限がある。
  ex.婚姻や養子縁組はできない、年齢に関する規定が妥当でない
  精神的苦痛などによる、慰謝料請求権も認められないが、人格権はある。


1-2 法令による制限

法律によって、権利能力が制限されている場合。
Ex.法人は、他の会社の無限責任社員になることができない。
――――図解・判例・条文等――――


1-3 目的による制限

法人は、その目的の範囲内において、権利や義務を取得する(43条)。この「目的の範囲」が、法人の何を制限しているかが問題となる。

43条は法人の何を制限しているか
能力制限説
  法人の能力を制限しているとする。学説は、さらに分かれる
@ 権利能力制限説 法人の権利能力を、目的の範囲内に制限している
A 行為能力制限説 法人の行為能力を、目的の範囲内に制限している
B 権利能力・行為能力制限説(多数説) @・Aの両方を、目的の範囲内に制限してる

代表権制限説
原則、法人はすべての財産上の権利義務が帰属し、43条は、理事の代表権を、目的の範囲内に制限している。


43条が能力を制限すると考えた場合
能力を制限している立場にたつと、法人が目的の範囲「外」の行為をすることについての処理が問題となる。
【権利能力】を制限している学説への批判
目的の範囲「外」の行為をする権利能力を有していないことになる=目的の範囲外の行為は無効となる=取引の相手方を害するのでは

【行為能力】を制限している学説への批判
法人の不法行為責任を認める44条1項との関係で、法人の目的の範囲に、「法人が不法行為をなすこと」が含まれることになってしまう。




43条(法人の能力)
法人は、法令の規定に従い、定款又は寄附行為で定められた 目的の範囲内において、権利を有し、義務を負う。


「目的の範囲」とは
@営利法人の場合
定款記載の目的からみて客観的、抽象的に必要なものは取引の安全上目的に含まれ、 法人の性質に反しない行為はほぼすべて含む(判例)
法人の権利を制限することは、結果的に取引の安全を害することとなる。 そこで、判例は、会社などの営利法人については、その範囲を広く認める傾向にある。


A非営利法人の場合
主として協同組合の員外貸付、つまり組合員ではない者への資金などの貸付が、 「目的の範囲」内に含まれるかが問題となるが、営利法人に比べ、目的の範囲は厳格に解されている。

理由(判例と同旨の学説)
 @法が員外貸付を禁止する趣旨は、組合員が借りにくくなることを防ぎ、組合員の利益を保護する
 A協同組合が、一般の金融機関に類似する行為を禁止して、一般金融機関の市場を保護する


しかし、員外貸付であると知りながら貸付を受け、抵当権を設定した場合、後になって、 員外貸し付けの無効を理由に抵当権の消滅を主張することは、信義則に反して許されない(判例)




【判例/営利法人の目的の範囲の具体例/S45.6.24】
会社の政治献金も、会社の社会的役割を果たすためになされたものと認められる限り、会社の目的の範囲内の行為である。



2 法人の不法行為

2-1 法人が不法行為責任を負う要件

法人は、一定の要件のもとで不法行為責任を負う。その要件は以下のとおりである。

@理事その他の代理人が行ったこと
理事、仮理事、特別代理人、清算人のような法人の代表者の行為
監事や、理事から特定の行為を委任された任意代理人を含まない

A職務を行うにつき、損害を与えたこと
外形からみて、職務行為そのものと、それを遂行するのに必要な行為(外形理論)

B不法行為の一般的要件を満たすこと
理事や代理人の行為につき、故意や過失、因果関係、損害の発生等という不法行為の要件が備わっていること。



44条(法人の不法行為能力等)
1法人は、理事その他の代理人がその職務を行うについて他人に加えた損害を賠償する責任を負う。
2法人の目的の範囲を超える行為によって他人に損害を加えたときは、 その行為に係る事項の決議に賛成した社員及び理事並びにその決議を履行した理事その他の代理人は、連帯してその損害を賠償する責任を負う。


2-2 効果

上記の要件を満たすと、理事個人の行為につき、法人にも709条以下の損害賠償義務が発生する。 このとき、理事個人も責任を負うかという問題がある。

理事個人の不法行為責任はどうなるか
理事が与えた損害について、法人が44条で責任を負う場合、理事個人も一般の不法行為の規定に従って責任を負う。

【法人擬制説や否認説】からの説明
法人自身の不法行為というものは考えられないので、理事が個人的に責任を負うのは当たり前である
【法人実在説】からの説明
理事の行為は、理事個人の行為としての側面と、法人の機関の行為としての側面の2面性がある。

この法人と理事個人の責任は、不真正連帯債務の関係である。
→債権「多数当事者の債権債務関係」参照


法人の目的の範囲外の行為についての責任
法人の目的の範囲外の行為について、法人に責任がないことを前提とし、その行為の決議に賛成した理事が連帯して責任を負う。


2-3 他の規定との関係

44条と110条の関係
「民法総則・代理」を参照してください


44条と715条の関係
44条1項では、理事の行為につき、法人が責任を負うとしている。つまり、 法人の代表者の責任を法人も負うということである。
この44条には、法人が免責される規定はない。

715条1項は被用者の行為につき、使用者が責任を負うとしている。 つまり、法人が責任を負う範囲は、代表者の行為に限られていない。
ただし、法人が免責される規定(選任・監督上の注意義務を尽くしたこと)がある
詳しくは、「債権・不法行為」を参照/div>


民法総則のメニューに戻る |  トップページをここに表示


inserted by FC2 system