6.失踪宣告


1 失踪宣告制度の意義と効果

1-1 失踪宣告の意義

ある者の生死が不明である場合、家庭裁判所が、一定の要件のもとにその者が死亡したものとみなして、 財産関係や身分関係につき死亡の効果を発生させる制度を失踪宣告という。普通失踪と特別失踪がある。
「不在者」は不在者の生存を前提とし、「失踪者」は不在者の死亡を前提としているとされる
失踪宣告は、宣告された本人の権利能力を奪うものではないので、失踪宣告がされた者も、適法に法律行為をすることはできる。

普通失踪ある者の生死が年間不明である場合に、利害関係人が請求することで、裁判所が失踪を宣告する制度(30条1項)。
特別失踪 戦地にいった者や沈没船の乗組員など、生命の危難に遭遇した者の生死が、そ れら危難が去ったあと年間不明である場合に、 利害関係人が請求することで、裁判所が失踪を宣告する制度(30条2項)。


利害関係人とは
利害関係人とは、法律上、特別の利害関係をもつ者をいう。配偶者や推定相続人、受遺者、親権者、 不在者の財産管理人、終身定期金の債務者がこれにあたる。債権者や検察官は請求者とされていない。


1-2 失踪宣告の効果

普通失踪の場合は、7年の期間満了時に、 特別失踪の場合は、危難が去った時に死亡したとみなされる(31条)ので、 相続が開始し、配偶者は再婚できるようになる
普通失踪、特別失踪のいずれの場合も、宣告時から遡った時点で死亡とみなされる。 12年間行方不明だった者に失踪宣告がなされると、行方不明時より7年間の期間満了時に死亡したとみなされる。
――――図解・判例・条文等――――



























2 失踪宣告の取消し

失踪者の生存や、失踪宣告とは異なるときに死亡していたとわかった場合、 利害関係人か本人の請求により、裁判所は 失踪宣告を取消さなければならない。この取消によって、原則、従来の法律関係は復活する。例外は、32条。

失踪者が生きていたとわかっただけでは、失踪宣告の効力は当然に否定されない。 死んだと「みなす」効力を否定するには、取消手続による必要がある。


2-1 32条1項について

失踪宣告前に善意でなされた行為の効力は、失踪宣告の取消しの影響を受けない。

善意
失踪者から財産を得た者と、その相手方の双方が善意であることが必要である(判例)。
善意であれば足り、無過失は不要(通説)
善意とは、失踪者の生存、または宣告時ではないときに死亡したことを知らないことである


身分上の行為への適用
婚姻などの身分上の行為に、財産関係を定めた32条1項を類推適用するかが問題になる。 どちらの説にしても、後婚が有効か重婚となるかが争点となる。
【32条1項適用肯定説】双方善意なら再婚の効力に影響はない
【32条1項適用否定説】当事者の意思を尊重すべきとする説


善意者からの転得者
善意第三者からの転得者については、 転得者が悪意であっても、行為の効力に影響はないとする、絶対的効力説と 転得者が悪意ならば、失踪者は、財産を取り戻すことができるとする相対的効力説とに見解が分かれる
【参照】「意思表示/虚偽表示」


2-2 32条2項について

失踪宣告によって利益を得た者は、失踪宣告の取消しによって、その権利を失う。よって、得た利益を返還しなければならない。
  財産を得た者とは、生命保険の受取人、相続人、受遺者など。

現に利益を受けている限度
現に利益を受けている限度とは、手元に残っている失踪者の財産のこと。
 全額を浪費した場合⇒現存利益はないので返還する必要はない。
 生活費に充てた場合⇒現存利益はあるので、全額返還しなければならない。


悪意の財産取得者
32条2項の規定が、悪意の財産取得者にも適用されるかについては 悪意者は全額を返還する義務を負うとする善意者限定説と、 悪意であっても現存利益のみの返還でよいとする悪意者包説とに学説は分かれている
32条(失踪の宣告の取消)
失踪者が生存すること又は前条に規定する時と異なる時に死亡したことの証明があったときは、 家庭裁判所は、本人又は利害関係人の請求により、失踪の宣告を取り消さなければならない。 この場合において、その取消しは、失踪の宣告後その取消し前に善意でした行為の効力に影響を及ぼさない。
失踪の宣告によって財産を得た者は、その取消しによって権利を失う。 ただし、現に利益を受けている限度においてのみ、その財産を返還する義務を負う。

*32条1項について*
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【事例】
Bの夫Aに失踪宣告が出された
Bは不動産を、第三者Cに売却
Aが生還し失踪宣告が取消される

不動産の帰属(判例の見解)
双方善意/ 一方が悪意/ 双方悪意


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