2.私権行使の制限

私人は、私的自治の原則にもとづき、物権や債権という私法上の権利(私権)を行使することができる。 しかし、この私権の行使も無制限ではない。これは、条文に示されている。
以下にみる公共の福祉、信義誠実、権利濫用の禁止、また公序良俗(90条)のように、 抽象的な基準しか定められていない条文を一般条項という
1条(基本原則)
1. 私権は、公共の福祉に適合しなければならない。
2. 権利の行使及び義務の履行は、信義に従い誠実に行わなければならない。
3. 権利の濫用は、これを許さない。
1 公共の福祉

1条1項では、私権という権利そのものが、公共の福祉に反するものであってはならないとしている。 公共の福祉とは、社会一般の利益のことをさす。


2 信義誠実の原則

相手方の信頼を裏切ることのないよう、誠実に行動すべきであるという原則が、 信義誠実の原則である。信義則ともいう。
この原則から、以下のような原理が派生する。

2-1 信義誠実の原則の機能(判例)

 @法律や契約内容について、解釈の基準とする
 A当事者の利益を調整する
 B法律に規定がない部分を補完する


2-2 信義誠実の原則から派生する原理

禁反言の原則
自分のとった行動に矛盾する態度をとることは許されないという原則。読み方は「きんはんげん」。
  消滅時効の援用と関連する

クリーンハンズの原則
法を守る者だけが、法の尊重を求めることができるという原則
  この原則は、708条の「不法原因給付」にも見て取れる。

事情変更の原則
ある事情の変化により、契約当時の内容の遵守が不公平となる場合、契約内容を変更できるという原則

契約締結上の過失
契約を締結する過程で、過失によって契約が不成立となった場合は、相手方に生じた損害を賠償すべきだという法理

権利失効の原則
権利者が永い間権利を行使しなかったことで、相手がもう権利は行使されないだろうと信じていた場合、突然態度を変えて 権利を行使することは許されないという法理

このほかにも「安全配慮義務」「背信的悪意者排除論」「信頼関係破壊の法理」などがあるが、 後に該当箇所で個別に述べる













*禁反言の原則*
【事例】 債権が消滅時効にかかっていることを知らず、債務者が、自分の債権を承認するような言動をした場合 (「あのお金、1ヶ月後には必ず返しますから」などと債権者に言ってしまった場合等)、 その後、「時効にかかってたので払わないことにしまいした」とは言えない。 (参考文献/試験対策シリーズ)

*クリーンハンズの原則*
【事例】Aが、拳銃の購入資金をBに預けたが考えなおし、Bから購入資金を返してもらおうとした。 そして、Bが資金を返してくれなかった場合、Aは、裁判所に「Bから資金を返してもらってください」 と助けを求めることはできない。法に救済を求めることができるのは、法を遵守している者だけである。 (参考文献/試験対策シリーズ)



3 権利濫用の禁止

1条3項にもあるとおり、権利をむやみに濫用して行使してはならないという原則が、権利濫用の禁止である。

3-1 権利濫用とされた場合の効果

 @その権利に基づく請求や効果が認められない(宇奈月温泉事件S10.10.5等)
 A不法行為として損害賠償を命じられる(信玄公旗掛松事件T8.3.3等)
 B権利そのものが奪われる(834条など)


3-2 権利濫用か否かの判断

権利濫用か否かの判断は、権利者個人の利益と相手や社会に与える影響とを客観的に比較する基準と、 権利者が、相手に何かしらの害意をもっていたなどの主観的な事情による基準のふたつがある。いづれにしても、個別に検討するしかない。


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